鉄分を摂取するだけでは、血液を作ることができない?
血液を造るためには、鉄分を摂取するだけでなく血液を造る指令を出す必要があります。指令を出すホルモンが、腎臓で分泌される「エリスロポエチン」というものです。
アサイーの造血機能【アサイーで造血ホルモンが増加】
アサイーが赤血球をつくるスイッチを入れる高地トレーニングをしたような効果を発見
かねてより、アサイーを食べた人から「貧血症状が良くなった」「ヘモグロビン値が上がった」という声が多く上がっていましたが、その理由は謎のままでした。アサイーは鉄を豊富に含んでいますが、鉄の摂取量が増えたということだけの効果とは思えません。そこで、アサイーによる貧血改善の理由を解明しようと研究が重ねられ、アサイーの働きで赤血球が増えるメカニズムが発見されたのです。
そのメカニズムは、マラソン選手などのアスリートが行う高地トレーニングの効果と同様です。標高の高いところは低酸素になりますが、その環境を生き延びるために体が順応し、赤血球産生の指令を出すEPOの分泌が増えます。それにより赤血球が増加して、体中に運ぶ酸素の量も増えるという仕組みです。アサイーの場合、アサイーが腎臓の低酸素状態を誘導してEPOの分泌を促すことが認められました。その結果として赤血球が増加し、貧血症状が改善すると考えられます。
アサイーで造血するメカニズム
アサイーの摂取で、赤血球産生に働く造血ホルモン・エリスロポエチン(EPO)が増え、赤血球数やヘモグロビン値が上昇することが明らかになりました。これは、千葉大学(千葉大学大学院医学研究院 准教授(当時)清水孝彦ら)の研究によって、世界で初めて確認された事実です。
アサイー摂取が貧血症状を改善するメカニズムとして、「アサイーが血液を増やして貧血を改善するのではないか」という仮説を立て、アサイーを投与したマウスと非投与のマウス(対照群)のEPO量、血液パラメーターを比較する試験を行いました。 試験の結果、アサイー投与群のEPOの分泌量が、対照群と比較して有意に増えていました。また、赤血球数、ヘモグロビン値、血液に占める赤血球の割合であるヘマトクリット値も、有意に高くなっていることがわかりました。マウスのEPO分泌の仕組みはヒトと共通しているため、アサイーがヒトへの貧血改善効果をもたらす可能性を示唆しています。 ※この研究の論文は、2020年2月に国際科学雑誌『Nutrients』に掲載されました。
出典
新発見!アサイーの造血機能 ~アサイーで赤血球が増加 Takahiko Shimizu et al., Acai Transiently Upregulates Erythropoietin by Inducing a Renal Hypoxic Condition in Mice, Nutrients, 2020,12 533; nu12020533
貧血の実態
年を重ねて静かに進行!日本人40代女性の約5人に1人が「貧血」
貧血大国ニッポン!欧米の倍近く 妊婦は2倍以上 疲れやすい、顔色が悪い、爪が割れる、冷え性――これらはみんな貧血に見られる症状です。貧血は女性に起こりがちですが、特に日本人女性に多くなっています。世界保健機関(WHO)のデータによると、2019年の性成熟期*女性の貧血割合は、日本人は19.0%でアメリカや イギリスの倍近くでした。2000年には同程度だった中国と比べても、2019年には5%近くも割合が高くなっています。妊婦となるとさらに数値が跳ね上がり、2019年にアメリカでは11.5%、イギリスでは16.5%ですが、日本は23.4%です。先進国の中で、日本は超貧血大国といえそうです。
*生殖可能といわれる年代
30・40代は貧血世代 月経による血液ロスの積み重ねが原因
日本人女性の中でも、30・40代に貧血症状が顕著に多くなっています。原因と考えられるのが月経による血液ロスの積み重ねです。1回の月経での正常な経血量は大体20~140mlで、経血とともに血液の材料である鉄を毎月約40mg失っているといわれます。30・40代は長年にわたって血液ロスを繰り返しており、少しずつ静かに鉄不足が進み、自分でも気づかないうちに鉄欠乏性貧血になっている可能性があります。 さらに問題を大きくしているのは、貧血がなぜか軽く捉えられがちであること。自覚症状があっても、貧血と診断されても、放置する女性が少なくありません。女性自身の理解不足、知識不足が貧血の悪化を加速させている面があります。
出典
年を重ねて静かに進行!日本人40代女性の5人に1人が「貧血」
・WHO、NUTRITION LANDSCAPE INFORMATION SYSTEM (NLiS)、 Anaemia in women of reproductive age Anaemia in pregnant women
・山本佳奈著、貧血大国・日本、光文社、2016年 P7
・山本佳奈著、貧血大国・日本、光文社、2016年 P20-21
・厚生労働省、令和元年国民健康・栄養調査、第2部 身体状況調査の結果
・厚生労働省・公益社団法人日本産科婦人科学会
・公益社団法人日本産婦人科医会、女性の生涯健康手帳